教育基本法を考える⑤
「教育基本法を考える」シリーズも今回で最後になります。
今回は
法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。
2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。
教育基本法第2章 教育の実施に関する基本
第9条 教員
について述べていきます。
概要整理
ここでいちど先に述べた条文の
概要を整理しておきましょう。
- 教員は自らに課せられた崇高な使命を自覚し、その使命を遂行するに相応しい研究と修養に励まなければならない
- 教員という身分は尊重され、適正な待遇を受けることができ、養成と研修の充実が図られなければならない
と私なりにではありますが、このように整理することが出来ます。
実態との乖離
では学校現場(実態)はどうなのでしょう?
新任教員の残業 月平均90時間 名古屋 ―運動部指導で若手に多忙のしわ寄せ(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース
上記は名古屋大学大学院の内田良准教授が書かれた記事です。
これによると名古屋市の新人教員は月平均90時間以上の残業を強いられている、ということが分かります。
あくまで新人教員なのでベテランになるにつれて残業時間は減っていくかもしれません。
が、新人教員が月平均90時間以上の残業を強いられているという事実を見過ごすことは出来ません。
このような事実から先に述べた条文第2項の
「その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに」
の文言が実際の学校現場では全く機能していないと言って良いでしょう。
教員の身分が尊重されているのであれば月平均90時間以上の残業を強いられることは無いでしょうし、月平均90時間以上の残業が待遇の適正と言えないことは明らかです。
養成と研修の充実
先に述べた条文の第2項にある
「養成と研修の充実が図られなければならない」
についても言及したいと思います。
学校現場では新人研修、主幹教諭研修、ICT研修など様々な研修が日々行われています。
このように研修が数多く行われているのは、養成と研修の充実を図る為であることは言うまでもないでしょう。
ただ
これらの研修は全て教育委員会、学校等が用意した言わば「トップダウン型」
に過ぎないと考えます。
もし仮に
本気で教員の養成と充実を図ろうとするのであれば「トップダウン型」である従来の研修ではなく
教員自らが自発的に研修を行う「ボトムアップ型」が相応しいと言えるのではないでしょうか。
「ボトムアップ型」の研修が
望ましいのだけれども...
「ボトムアップ型」の研修こそが教員の養成と研修の充実を図る為には相応しいことは確かではあるのですが
実際に学校現場で「ボトムアップ型」の研修を行うにあたって最も障壁となるのは、やはり
教員の多忙化
と言えるでしょう。
教員自らが自発的に研修を行おうと思っても、余りの仕事の多さに
「トップダウン型」の研修に参加することで手一杯になっている、というのが現状ではないでしょうか。
意識の面から
教員の多忙化を考える
教員の多忙化を解決するにあたって
越えなければいけないハードルに関して
制度・意識の二面からアプローチする必要があると考えます。
ここで制度の問題に言及してもあまり意味はないので
意識の面からアプローチしたいと思います。
まずは教員自身が
- 祝休日は休む
- 定時に帰る
という意識を持つだけで、ほんの僅かではありますが
教員の多忙化を解決する兆しを見出すことが出来るのではないでしょうか。
追伸 「教育基本法を考える」シリーズを5回に分けて述べてきました。
私は今大学3年生ということもあり
大学の方で教員採用試験対策講座が日々行われ、同級生はその講座に出席し
教員採用試験合格に向けて鋭意勉強しています。
何とか教育法規を暗記しようと躍起になっている同級生を見る度に私は
「教育法規を覚えることは知識としては大切だけれども、それを覚えたところでどのような意味はあるのか?」
と真剣に聞きたいです。
教育法規の
- 内容を理解し
- 実際の学校現場に即しているのか
- 即していないのであれば、具体的にどのような策を取れば良いのか
といったようなことを考える方が
よっぽど大切だと思います。
今一度教育法規を覚える意味を
考えるべきだと強く思います。
青野